
おはようございます。中小企業診断士の山口晋です。
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本日のテーマは
「【事例Ⅳ CVP・セールスミックス】直近5年を数字で追う|制約条件の読み方」です。
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【事例Ⅳ CVP・セールスミックス】直近5年を数字で追う|制約条件の読み方
計算特別枠の2日目は、CVPとセールスミックスです。
直近5年の計算設問24問のうち、CVPが5問、セグメント別損益(セールスミックス・製品廃止)が5問。あわせて10問で、NPVに次ぐ量です。
そして「NPV以上にCVPは絶対取らなきゃいけない」と繰り返し言われます。その理由から説明します。
※この記事の正答率は、壱市コンサル塾の再現答案採点サービスに提出された令和7年度試験の再現答案213名分を集計したものです。
なぜCVPを落とせないのか
| 年度 | 設問 | 問われたこと | 難度 |
|---|---|---|---|
| 令和3年度 | 第3問 設問1 | 目標利益達成の販売数量(総経費から固変分解) | 標準 |
| 令和3年度 | 第3問 設問2 | 数量で単価が変わる場合の販売数量 | 難 |
| 令和5年度 | 第2問 設問1 | 変動費率・固定費・BEP・BEP比率 | 標準 |
| 令和7年度 | 第2問 設問1 | 複数製品の損益分岐点販売数量 | 難 |
| 令和7年度 | 第2問 設問2 | 目標利益達成数量(複数の上昇率を同時反映) | 難 |
取れる問題がここにある
NPVは「難」が並びます。CVPには確実に取れる設問が混じっている。
だから「何が何でも取りたい。ここが合否の分かれ目、事例Ⅳの山場」と位置づけられます。
令和7年度の第2問設問1は正答率72〜74%。3人に2人以上が取れている設問を落とすと、それだけで厳しくなります。
令和7年度|セット法を身につける
複数製品のCVPは、令和7年度の第2問がそのまま教材になります。D社は製品X(伝統的な仏壇)と製品Y(インテリア型)の2つを扱っています。
| 項目 | 製品X | 製品Y |
|---|---|---|
| 販売価格 | 600千円 | 560千円 |
| 1基当たり変動費 | 230千円 | 140千円 |
| 限界利益 | 370千円 | 420千円 |
販売数量の比は2対3で一定。固定費は45,000+35,000+400,000=480,000千円です。
設問1|損益分岐点
セット法の4ステップ
① 製品Xを2基・製品Yを3基まとめて1セットと定義する
② セット1組の限界利益 =(600−230)×2 +(560−140)×3 = 2,000千円
③ 必要セット数 = 480,000 ÷ 2,000 = 240セット
④ 製品X = 2×240 = 480基、製品Y = 3×240 = 720基
損益分岐点売上高は(600×480)+(560×720)=691,200千円。数量×単価の合計でも、セット数×セット売上高でも同じ値になります。両方で計算して検算できます。
③で出るのはセット数
製品の販売数量ではありません。そのまま解答欄に書くと、正しい手順を踏んでいるのに数値が合いません。
また「固定費÷(1−変動比率)」で先に売上高を出そうとすると、2製品の加重平均変動比率を作る手間が増えます。セット法のほうが速く、検算もしやすい形です。
過去問にない形が7割強に解かれた意味
この形は2次試験の過去問には出ていません。しかし簿記1級では標準的なパターンです。
予想問題集や周辺論点の演習をしていた受験生にとっては、初見ではありませんでした。
「本試験で初めて見る問題をなくす」という準備の意味が、この設問に表れています。
設問2|条件が2つ同時に動く
次年度は変動費が5%上昇し、共通固定費も10%上昇します。製品Xの販売数量は500基に固定、目標利益は50,000千円。このとき必要な製品Yの販売数量を求めます。
- 変動費上昇後の限界利益 製品X:600−230×1.05=358.5千円、製品Y:560−140×1.05=413千円
- 回収すべき固定費と目標利益の合計 (45,000+35,000)+400,000×1.1+50,000=570,000千円
- 製品Xの限界利益 358.5×500=179,250千円
- 製品Yで確保すべき額 570,000−179,250=390,750千円
- 必要数量 390,750÷413=946.12… → 947基
3つの引っかけ
① 変動費の上昇だけを反映して固定費の上昇を忘れる(またはその逆)。動く条件が2つあることを最初に書き出してください
②「変動費が5%上昇」を「変動費率が5ポイント上がる」と読み違える。5%上昇は変動費額に1.05を掛ける処理です
③ 割り切れない場合の指示。この年は切り上げなので946ではなく947です
セールスミックス|制約条件で解く
直近5年で4回出ています。令和6年度と令和7年度は2年連続。「毎年出る論点、頻出論点に格上げされた」と評されています。
原則は「制約条件1単位あたりの限界利益」
単位あたり限界利益で比べてはいけません
比較すべきは制約となる資源1単位あたりの限界利益です。ここを短絡すると答えが変わります。
令和4年度がその典型でした。
令和4年度設問1|逆転が起きる
製品A:販売価格7,800円、直接材料費4kg/個、直接作業時間2h/個 → 限界利益3,800円/個
製品B:販売価格10,000円、直接材料費2kg/個、直接作業時間4h/個 → 限界利益4,400円/個
個あたりではBが大きい。ところが時間あたりでは A:3,800÷2=1,900円/h、B:4,400÷4=1,100円/h でAが勝ちます。
制約は直接作業時間3,600h。Aのみ生産して 3,600÷2=1,800個、利益は 3,800×1,800 − 4,000,000 = 2,840,000円
制約が2つになったら連立方程式
令和4年度設問2|原材料の上限が加わる
アルミニウムの消費量に年間6,000kgの上限が付きます。制約が2本になりました。
労働時間:2a + 4b ≦ 3,600 原材料:4a + 2b ≦ 6,000
連立して解くと a=1,400個、b=200個。
利益 = 3,800×1,400 + 4,400×200 − 4,000,000 = 2,200,000円
制約が1本なら時間あたり限界利益の大きい順に割り付ける。2本以上なら連立方程式。この切り替えを覚えておけば、令和4年度の2問は短時間で処理できます。
連立方程式の答えが最適とは限らない
令和6年度の落とし穴
連立方程式で交点を求めても、それより利益が大きくなる点がないかを検証する必要があります。
交点は制約線が交わる場所にすぎず、端点のほうが利益が大きいことがあります。
令和6年度設問1|端点が正解だった
X社向け:限界利益 3,000−1,780=1,220円。直接作業時間1h、機械運転時間2h。
Y社向け:限界利益 4,800−1,780−1,600=1,420円。いずれも2.5h。
時間あたりで比べるとX社向けが有利なので、X社向けを上限の6,500袋まで作ります。
機械運転時間の残り:13,600 −(6,500×2)=600 → 600÷2.5=240袋がY社向け。
営業利益 = 1,220×6,500 + 1,420×240 − 5,600,000 = 2,670,800円
価格を逆算させる形もある
令和6年度の設問2は、Y社が「最低2,400袋」を希望し、価格交渉に応じるという条件でした。数量が先に決まっていて、価格を求めます。
- Y社向け2,400袋の直接作業時間 2,400×2.5=6,000時間
- 機械加工時間の残り 13,600−6,000=7,600 → 7,600÷2=3,800袋がX社向け
- X社向けのみの営業利益 3,800×1,220 − 5,600,000 = △964,000円
- Y社向けで確保すべき額 設問1の2,696,000 + 964,000 = 3,660,000円
- 1袋あたり限界利益 3,660,000 ÷ 2,400 = 1,525円
- 販売価格 1,525 + 変動費3,380 = 4,905円
設問1で求めた利益を下回らないことを条件にしている点が要です。設問1の答えを使うので、そこを外すと連鎖します。
令和7年度設問3|制約が2種類
物理的な制約と、政策的な制約が同時に置かれた形です。第2問のなかで最も難しく、正答率は12〜26%でした。
条件
製品Yをモデルチェンジし、販売価格650千円に。個別固定費が年5,000千円増える
物理的制約=両製品合計の直接作業時間は年700時間まで(製品X 0.5h/基、製品Y 0.3h/基)
政策的制約=製品Xの割合が総販売数量の25%を下回らない
- 製品Yの限界利益 650 − 140×1.05 = 503千円
- 時間あたり 製品X:358.5÷0.5=717千円/h、製品Y:503÷0.3=1,676千円/h
- 製品Yが有利だが、Xを25%以上にする必要がある → X:Y=1:3、つまり Y=3X
- 時間制約に代入 0.5X + 0.3×3X = 700 → 1.4X = 700 → X=500基、Y=1,500基
- 利益 =(358.5×500 + 503×1,500)−(520,000 + 5,000)= 408,750千円
追加固定費を忘れない
モデルチェンジに伴う個別固定費5,000千円を、最後の利益計算で加算し忘れる失点が起きます。
条件が増えた設問ほど、最後に条件の一覧を見返す習慣が効きます。
公式が効かない年がある
通常のCVPは単価一定が前提です。その前提が崩れる年があります。
令和3年度設問2|数量で単価が変わる
目標販売数量に応じて1kg当たり単価が変わる表が与えられました。20,000kg以下なら1,400円、30,000kgまでなら1,240円、40,000kgまでなら1,060円、50,000kgまでなら860円。
しかも「25,000kgなら全量が1,240円」という注記付き。段階的に変わるのではありません。
この形では公式が使えないので、区分ごとに計算して、その区分に収まるものを探します。
まず固変分解から入ります。50,000kg生産時の総経費3,000万円のうち固定費が40%なので、固定費=1,200万円、変動費=1,800万円。1kg当たり変動費は1,800万円÷50,000=360円です。
| 販売数量の区分 | 単価 | 計算結果 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 0〜20,000kg | 1,400円 | X=25,961.5…kg | 区分外 |
| 20,000超〜30,000kg | 1,240円 | X=30,681.8…kg | 区分外 |
| 30,000超〜40,000kg | 1,060円 | X=38,571.4…kg | 該当 |
| 40,000超〜50,000kg | 860円 | X=54,000kg | 区分外 |
目標販売数量の範囲に収まるのは3番目だけ。小数点以下を切り上げて38,572kgが答えです。
固変分解を飛ばすと別の答えになります
変動費を1,800万円のまま(1kg当たりに直さずに)計算すると、1,200X − 1,800万 − 1,200万 = 1,500万 から X=37,500kg となり、誤答になります。
総経費が与えられたら、まず固定費と変動費に分け、1単位あたりに直す。この手順を飛ばさないでください。
CVPの基本形|4つが連鎖する
令和5年度第2問設問1が典型でした。2期間のデータから、4つの数値を順に求めます。
- ① 変動費率を逆算する(2期間で変動費率一定という仮定から)
- ② 固定費を逆算する
- ③ 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)
- ④ 損益分岐点比率 = 損益分岐点売上高 ÷ 売上高
最初の1つを外すと、4つとも崩れる
完全な連鎖構造です。変動費率を外した時点で、残り3つはすべて道連れになります。
逆にいえば、変動費率さえ正しければ残りは公式の当てはめ。検算の時間は最初の1つに集中させてください。
もう1つの注意が仮定の読み方です。令和5年度は「原価予測は営業利益の段階まで」と明示されていました。経常利益や税引後の数値を使うと合いません。
製品廃止の判断|回避可能かどうかで切る
令和5年度第2問には、不採算製品を中止すべきかを問う設問もありました。
判断の基準は貢献利益
中止すべきでない。理由は貢献利益が5,000万円と正になるため。
売上高から変動費と回避可能な個別固定費を引いた額が正なら、その製品は共通費の回収に貢献しています。
回避不能な個別固定費 15,000×(1−0.8)=3,000万円 は、廃止しても残ります。
代替案の評価もセットでした。Y製品の売上高をいくら増やせば補えるか。0.4S ≧ 5,000(貢献利益)+3,000(回避不能な固定費)=8,000万円 より、S ≧ 20,000万円です。
令和8年度に向けて
- 複数製品ならセット法。比率が固定されている場合は1セットにまとめると速い
- 制約が1本なら制約単位あたり限界利益、2本以上なら連立方程式。切り替えを判断する
- 連立方程式の解が最適とは限らない。端点のほうが利益が大きい場合があります
- 動く条件を最初に書き出す。変動費と固定費が同時に動く年があります
- 総経費が出たら固変分解して1単位あたりに直す。ここを飛ばすと答えが変わります
- 単価一定の前提が崩れたら区分ごとに計算する。公式に当てはめない
- 端数処理の指示を最後に確認する。切り上げ・四捨五入・単位(円かkgか基か)
次回
明日は経営分析と記述です。地味な2つに見えますが、あわせて45点前後が計算とは独立して動きます。
NPVやCVPが崩れても、この45点は減りません。事例Ⅳの土台はここにあります。
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▼ 事例Ⅳ 解説記事の一覧
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・【事例Ⅳ②】経営分析は19年連続で第1問|19年分の「聞かれ方」を並べてみた
・【事例Ⅳ③】CVPは19年中15年で出題|素直な損益分岐点は平成24年度が最後だった
・【事例Ⅳ④】NPVは平均配点31.5点で最大|落ちるのは公式ではなく条件の拾い漏れ
・【事例Ⅳ⑤】意思決定会計とCF計算書ほか|増えている論点と、長く出ていない論点
・【事例Ⅳ⑥】記述66問を分類|計算が壊れても拾える20点の設計図
【事例Ⅳ 計算問題の解き方】
・【事例Ⅳ NPV】直近5年を数字で追う|キャッシュフロー表のつくり方と、5つの仕掛け
・【事例Ⅳ CVP・セールスミックス】直近5年を数字で追う|制約条件の読み方(本記事)
・事例Ⅳ 経営分析・記述 5年分の解き方|指標選択と80字(公開予定)
※グレーの記事は公開後にリンクされます。
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